大阪府箕面の名物といえば、「もみじの天ぷら」。この伝統的なお菓子は、一行寺楓という種類のもみじの葉を使用し、衣を付けて揚げたものです。
素朴で懐かしい味わいが特徴で、一度食べたら忘れられない美味しさがあります。関西にお住まいの方なら馴染み深いものでしょうが、それ以外の地域の方にはまだまだ知られていないかもしれません。
この記事では、その謎に包まれた「もみじの天ぷら」について、その歴史から製造過程、そして味わいまで詳しく解説します。
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大阪・箕面生まれの伝統的お菓子「もみじの天ぷら」の魅力
関西人なら一度は耳にしたことのあるであろう箕面名物「もみじの天ぷら」。
その名の通り「もみじ」(一行寺楓という種類の葉を使用)に衣を付けて揚げた素朴で懐かしい味のお菓子です。一度食べると病みつきになる美味しさです…!
軽い口当たりで価格もお手頃なもみじの天ぷらですが、関西にお住みの方以外はあまり馴染みがないかもしれません。
もみじの天ぷらは歴史も古く、商標登録もされている伝統的なお菓子なんです!
紅葉の美しい箕面はこんな素敵なところです!
「もみじ」って食べられるの?食文化と栄養価
日本の秋の風物詩の一つ紅葉。秋の山々で特に赤色や黄色に美しく染まったもみじは、昔から多くの人々を虜にしてきました。
そこで、そもそも「もみじ」は食べられるのか?という疑問があるかもしれませんが、実はもみじはお茶や、料理、スイーツの彩りなど、幅広いジャンルで利用されている食材でもあります。
もみじには、βカロテン、ルテイン、ポリフェノールなど身体に良い成分が入っており、病の予防にも効果があることが証明されている栄養価の高い食べ物なのです。
美味しくて栄養価も高い!もみじの意外な効果
・成人病の予防…もみじの葉は、ポリフェノールを多く含みます。ポリフェノールは糖類の分解・吸収を抑える効果があるとされます。油と糖を一緒に摂ったときに脂肪の吸収や、血糖値が上がるのを抑えるため、成人病の予防が期待できます。
・疲れ目の予防…もみじの葉にはアントシアニンが含まれます。アントシアニンは、血行をよくしたり、網膜を保護する機能を高めたりする効果があるとされるポリフェノールの一種です。筋肉の緊張を緩和する作用もあるといわれ、目の焦点が合いにくくなるのを防ぐなど、視覚機能を改善する効果が期待できます。
「もみじの天ぷら」の気になるお味は?
さて皆さんは「もみじの天ぷら」と聞いてどのような味を想像しますか?
私は天ぷらという部分にフォーカスしてしょっぱい味なのかと思っていましたが、食べてみるとびっくり。予想とは異なる味に驚きました。
まず袋を開けてみると美味しそうな香りがほのかに漂います。触ってみると衣は分厚く、しっかりとした硬さを感じます。
ワクワク高鳴る胸を抑えながらいざ実食!
一度食べると止まらない美味しさ!
かりんとうのようなほのかな甘さと歯ごたえを感じ、子どもの頃食べた事のあるような、どこか懐かしい味わいがしました。
揚げ物ですが油っぽさはなく、ペロリとたくさん食べられて、あとを引く味に手が止まらなくなってしまう美味しさです。
天ぷらとは言っても一般的な天ぷらとは違い、しっかりと油を切って味を馴染ませた方が美味しくなるそうです。
油の切り方や揚げる時間などによって味が変わってしまうと言われるもみじの天ぷらは、とても繊細な食べ物なので、開封後は早めにお召し上がりください。
「もみじの天ぷら」の材料と製造方法
どのようにして「もみじの天ぷら」は作られているのでしょうか?
材料は至ってシンプルです。
<もみじの天ぷら材料>
・もみじの葉(一行寺楓)
・塩
・小麦粉
・水
・砂糖
・(白ゴマ)
たった6つのみ!
それでは次に作り方を見ていきましょう。
1年以上かけて作られる、美味しい「もみじの天ぷら」ができるまで!
美しいもみじを目で楽しんで、舌でも楽しめる!そんな美味しい「もみじの天ぷら」ができるまでをご紹介します。
丁寧に収穫されるもみじの葉
紅葉がシーズンを迎える11月中旬〜12月初旬に、自然ともみじの葉が落ちるのを待ち、一枚一枚大切に手拾いで収穫されています。
天ぷらの材料になるもみじは、「一行寺楓」という特殊な種類の木で、箕面の山に自生している普通のもみじが使われているわけではありません。
一行寺楓は紅葉したときに黄色になるのが特徴的です。赤色のもみじが良いと思われるかもしれませんが、赤色だと揚げた時に色が濃くなりすぎてしまので天ぷらには向かないようです。
一枚一枚丹念に「塩漬け」
もみじの葉は収穫後、一枚一枚丁寧に水洗いをします。その後形を整えて樽の中で塩漬けにします。すぐに塩漬けにしないとせっかく綺麗な黄色が変色してしまうためです。
1年間かけて塩漬けにすると、もみじの葉の灰汁(アク)がぬけて、葉脈も柔らかく食べやすくなります。しっかりアクや葉の葉脈をキレイに取らなければ、おいしいもみじの天ぷらはできません。
「塩抜き」して綺麗なもみじだけを選別
塩漬けから1年後、いよいよ塩抜きです。
もみじの葉を一枚一枚、目で確認して形の綺麗な葉を選びます。
この時2〜3割の葉は汚れていたり、虫食いのため使えません。店頭で売られている天ぷらには綺麗な葉のもみじが使用されています。
その後、選び出された葉を流水、水に漬けて塩抜きしていきます。
この塩抜きの工程で、もみじの葉の塩をしっかりと抜かないといけません。
というのも、この段階でしっかりと塩を抜かないと販売所で見かけるふっくらとしたもみじの天ぷらにならないからです。
水洗い後には葉をきれいに揃えて軸を切ります。
もみじをじっくりと「揚げる」
水で溶いた小麦粉に砂糖と白ごまを加えた衣に、もみじの葉をつけます。
菜種油で一枚一枚、きつね色になるまで途中ひっくり返しながら約20分かけてじっくりと揚げていきます。
美味しい「もみじの天ぷら」出来上がり!
きれいに「もみじの天ぷら」が揚がったあとは、約1日かけて油抜きをして完成です。
油抜きをする理由は、油の切り方や揚げる時間によってもみじの天ぷらの味が変わってくるからです。
店頭で食べる場合には揚げたての「もみじ揚げ」も美味しいですが、お土産やお持ち帰りで食べる場合には「もみじの天ぷら」がおすすめです。
油をしっかりと取り除き、もみじ全体に味がなじんでいるため、より一層美味しくなっていきます。
見つけた人はラッキー!9裂のもみじの天ぷら
もみじは通常拳状に葉が裂けて分かれています。そんな中でも9裂の葉は大変珍しく、もし見つけることができればすごくラッキーです!
もみじの天ぷらは箕面周辺で販売されていますが、大雨やそのほかの理由で販売を中止している場合もあるので、気になるお店がある場合は事前に問い合わせておいた方が安心ですね。
「もみじの天ぷら」の歴史と起源
もみじの天ぷらは今から1300年ほど前に誕生したと言われており、実はとても長い歴史のあるお菓子です。
修験道場であったこの箕面山で役行者(えんのぎょうじゃ)が赤く色付くもみじの美しさに心打たれて「修験道場を訪れる旅人をぜひもてなしたい!」と、灯明の油(菜種油)でもみじの天ぷらを作ったのが始まりです。
食べてみたくなるほどに紅葉の美しさに惹かれた一人の人間が「もみじの天ぷら」を作ったという事が由来だったのですね。
役行者・修験道場ってなに?
役行者(えんのぎょうじゃ)とは...
役行者とは、7~8世紀ごろの飛鳥時代に奈良を中心に活動し、山に実在していたといわれる呪術者です。本名は役 小角(えんの おづぬ)と言います。(役優婆塞()などとも呼ばれています。)
役行者は、修験道の開祖としても知られており、人を食べてしまう鬼夫婦を呪術で自在に操ったり、空を飛ぶことから天狗に喩えられた人とされています。
幼少期からも異能を開花させており、誰にも習っていない梵字(古代インド語⁾を書いていたそうです。
日本語でも難しいのに、梵字を書いていたなんてすごいですよね。
修験道とは...
昔の日本では山には神様が居る、もしくは山自体が神様と信じる山岳信仰が盛んでした。
修験道は、山へ籠って厳しい修行を行うことで悟りを得る事を言い、先ほど紹介した役行者は約1300年前に修験道を創始した開祖と言われています。
特に信仰を集めていた3つの山があり、「日本三大修験道」などと呼ばれています。
日本三大修験道:「大峰山」奈良県、「出羽三山」山形県、「英彦山」大分県・福岡県
明治5年(1872)に修験禁止令が出されて修験道は無くなってしまいますが、修験道の気合術は武術として伝承され、合気道にも生かされています。
では修験道を行うことで得られる効果は一体何なのでしょう。
大きく分けて2つあります。
SNSやインターネットが普及している現代社会にも通じる「余計な事を考えすぎずにシンプルに生きる」という考え方はいつの時代も変わらず大切にしていきたいものですね。
全国に広がる「もみじの天ぷら」 & もみじスイーツ
もみじの天ぷらといえば大阪府箕面、そしてその他にも京都や、広島の「もみじ饅頭」も有名ですね。
京都の「もみじの天ぷら」
京都府<西明寺>
「もみじの天ぷら」発祥は大阪府箕面市ですが、同じく紅葉が有名な京都府の高雄でも、もみじの天ぷらが味わえます!
高雄は嵐山から数キロ行った場所にあり、観光客が比較的少なめで観光しやすい場所です。それでいて嵐山や嵯峨野に引けをとらない景観を誇っており、わざわざ「もみじの天ぷら」を食べに高雄へ訪れる人も多いそうです。
機会があれば箕面と京都の「もみじの天ぷら」食べ比べというのも面白そうですね。
広島の「もみじ饅頭」と「揚げもみじ」
広島県宮島地方ではあんこがたっぷり詰まった「もみじ饅頭」が有名です。もみじ饅頭を揚げた「揚げもみじ」もとても美味しいです!
「揚げもみじ」の作り方はとってもシンプルです。
もみじ饅頭に衣を付けて揚げたもので、外はカリカリ、中はもっちりとした不思議な食感で、あんこだけでなく、カスタードクリーム味やチーズ味もあります。
竹串に刺さって提供されるので、手を汚さずに片手で食べることができるのもポイントです!
また、お家で自分で作れる「揚げもみじ揚げたてキット」も販売されていますので、広島へ訪れた際には是非ご賞味ください!
新しいフレーバー!伝統と新しさが融合した「もみじの天ぷら」
「もみじの天ぷら」は、かりんとうを思わせるような、その優しい甘さが特徴的です。最近では、さまざまなフレーバーの「もみじの天ぷら」も登場しています。
ブラックペッパー味、梅かつお味、七味味、黒糖味、ごぼう味、ゆず胡椒味、キャラメル味、チョコ味、コーンポタージュ味、グリーンティー味などなど…、驚くほど多彩なフレーバーが展開されています。甘いものが苦手な方でも、おつまみ感覚で楽しむことができ、食べ比べを楽しむこともできるので、お土産におすすめです!
東京でも楽しめる「もみじの天ぷら」!アンテナショップ『大阪百貨店』
今回は、大阪府箕面の伝統的なお菓子、「もみじの天ぷら」について詳しくご紹介しました。
関西以外の地域に住んでいる方にとっては、馴染みの少ないお菓子かもしれません。しかし、その独特の味わいと製造過程を知ると、その魅力に引き込まれること間違いなしです。
もし東京にお住まいの方であれば、有楽町にある「大阪百貨店」というアンテナショップで購入することができます!
気になった方はぜひ、足を運んでみてください。
大阪百貨店
住所 :東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館1F
営業時間:10:00~22:00(日祝祭 10:00~21:00)
アクセス:
JR山手線・京浜東北線「有楽町駅」京橋口(銀座側)より徒歩1分東京メトロ有楽町線「有楽町駅」D8出口直結
大阪百貨店は2022年12月30日に閉店しました。
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