石動山の歴史と文化を感じる遺構

旧観坊は、江戸時代後期に建てられた唯一の現存する寺坊です。かつては石動山天平寺の58坊の一つとして存在し、現在は県指定文化財として保存されています。

旧観坊の建築様式は、入母屋造り、平入り、茅葺きの屋根を持ち、農家風の外観が特徴です。しかし、細部には寺坊としての格式が感じられる意匠が施されています。例えば、絵様舟肘木(えようふなひじき)や化粧棰木(けしょうたるき)などの装飾が見られ、かつての寺坊の面影をしのぶことができます。

明治初年の神仏分離により、旧観坊は寺坊としての役割を失い、その後は農家の住居として利用されていました。しかし、過疎化の影響で無住となり、昭和51年(1976年)に修理が行われました。現在では、石動山天平寺の唯一の遺構として、その貴重な価値が認められています。