信州最古の禅寺にそびえ立つ国宝・八角三重塔

安楽寺は、別所温泉に位置する曹洞宗の寺院で、信州最古の禅寺として知られています。山号は崇福山、院号は護国院と称し、開山は樵谷惟仙(しょうこくいせん)です。安楽寺の本尊は釈迦如来であり、境内には国宝に指定されている八角三重塔がそびえ立っています。この八角三重塔は、鎌倉時代末期に建てられたもので、日本国内で唯一現存する木造の八角塔婆です。

安楽寺の歴史は平安時代の天長年間(824〜834年)に遡りますが、鎌倉時代中期には北条氏の外護により禅寺として栄えました。特に、安楽寺の八角三重塔は中国宋時代の禅宗様式(唐様)で建築されており、その美しい建築様式は訪れる人々を魅了します。塔の一番下の屋根は裳階(もこし)と呼ばれ、雨や日光を防ぐための庇(ひさし)として機能しています。

安楽寺の見どころは、八角三重塔だけではありません。境内には黒門や本堂、経蔵(市指定有形文化財)など、歴史的な建造物が点在しています。黒門は寛政4年(1792年)に建てられたもので、安楽寺の山号である「崇福山」の文字が刻まれています。本堂は、真田幸村が別所温泉を訪れた際の隠れ宿としても知られており、歴史的なエピソードが数多く残されています。

また、安楽寺の境内は四季折々の自然に囲まれており、特に夏には蓮池が美しい花を咲かせ、訪れる人々を楽しませてくれます。境内の木々は高くそびえ、深い緑に包まれた静かな雰囲気が漂います。秋には紅葉が美しく色づき、冬には雪景色が広がり、四季を通じて異なる表情を見せてくれます。