善光寺と対をなす平安時代から続く信仰の地

北向観音は、天台宗の寺院でありその名の通り本堂が北を向いていることが特徴です。この珍しい配置は、長野市にある善光寺と向かい合う形になっており、善光寺が来世の利益をもたらすとされるのに対し、北向観音は現世の利益をもたらすと信じられています。そのため、両方をお参りする「両詣り」が古くから行われてきました。

北向観音の歴史は古く、平安時代に遡ります。伝説によれば、平安時代の僧侶・円仁(えんにん)がこの地を訪れ、観音像を安置したことが始まりとされています。その後、鎌倉時代には源頼朝が戦勝祈願を行い、戦国時代には武田信玄が戦勝祈願を行ったと伝えられています。

北向観音は、厄除けや恋愛成就のパワースポットとしても知られ、多くの参拝者が訪れます。境内には、上田市指定天然記念物である「愛染カツラ」の大樹や、夫婦杉、愛染明王像などがあり、特に恋愛成就を願う若い女性たちに人気です。また、境内には多くの歌碑や石造物が点在し、歴史と文化を感じることができます。

また、四季折々の美しい風景も北向観音の魅力の一つです。春には桜が咲き誇り、夏には緑豊かな木々が涼しげな影を落とします。秋には紅葉が境内を彩り、冬には雪景色が幻想的な雰囲気を醸し出します。どの季節に訪れても、その時々の自然の美しさを堪能することができます。