日の本の夜を守る朱塗りの神殿
日御碕神社は、古来より「日の本の夜を守る」とされる神社です。伊勢神宮が「日の本の昼を守る」のに対し、日御碕神社は夜を守る役割を担っています。島根半島の西端に鎮座し、厄除けや縁結びのご利益があるとされています。
神社は上下二社から成り、下の宮「日沉宮(ひしずみのみや)」には天照大神(あまてらすおおかみ)が祀られ、上の宮「神の宮(かみのみや)」には素戔嗚尊(すさのおのみこと)が祀られています。
現在の社殿は江戸時代、徳川家光の命により建てられました。朱塗りの社殿は、日光東照宮を思わせるような美しい彫刻が施されており、狩野派や土佐派の絵師たちによる壮麗な壁画も見どころの一つです。特に、蛙股(かえるまた)と呼ばれる建築部材には、竜虎や鶴亀、松竹梅などの見事な彫刻が施されています。
日御碕神社の境内には、花崗岩の鳥居や朱の楼門があり、松林を背景に荘厳な雰囲気が漂います。楼門をくぐると、正面に日沉宮があり、右手の小高い場所に神の宮が建っています。両本殿ともに国の重要文化財に指定されており、その歴史的価値は非常に高いです。
また、日御碕神社の西方約100メートル沖には、経島(ふみしま)という無人島があります。この島は、天照大神が祀られる以前に鎮座されていた場所とされ、現在はウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されています。毎年11月下旬から冬にかけて約5000羽ものウミネコが飛来し、4月から5月にかけて産卵・孵化します。
日御碕神社は、夕日の美しさでも知られています。特に、8月7日に行われる例祭「神幸神事(夕日の祭り)」は、刻一刻と日が沈む中で執り行われ、その神々しさに多くの参拝者が魅了されます。この祭りの際には、神職が舟で経島に渡り、神事を行います。