風水の力が宿る優雅な和風建築

春陽荘は、昭和16年(1941年)に造船業で成功を収めた岩木家の社長宅兼事務所として建てられた歴史的な建物です。設計は家相方位学の権威である山本豊圓氏が手掛け、風水の思想に基づいて設計されました。地元の大工棟梁である斉藤三吉氏らが7年の歳月をかけて完成させたこの建物は、427坪の広大な敷地に貴賓館、蔵、客殿、寝殿、常住殿など8棟の建物が配置されています。

春陽荘は、平成16年に国の有形文化財に登録され、平成29年3月には兵庫県景観形成重要建造物として指定されました。その後、長らく門を閉ざしていた春陽荘は、平成27年に新しい家主が買い受け、補改修に着手しました。伝統の技や職人の遊び心が光る意匠を再現し、歴史文化的な価値を現代に活かしつつ後世に伝えるための試みが行われています。

現在、春陽荘は宿泊施設としても利用されており、貴賓館では一組限定のプライベート空間を提供しています。また、母屋常住殿では甘味処や特別料理企画が行われており、淡路人形浄瑠璃や和装での撮影会、お茶会など、日本文化の継承の場としても活用されています。さらに、文化庁事業のVRデジタル化にも参画しており、伝統を守りながら新たな活用法を模索しています。

春陽荘の魅力は、その優雅な和風建築群と調和のとれた趣あるたたずまいにあります。建築家出江寛氏によって設計された塀や門扉も見どころの一つです。また、環境負荷を抑えた低炭素・循環型社会に資する運営に取り組んでおり、SDGs達成にも貢献しています。

春陽荘は、淡路島の新たな国際観光資源として再生され、訪れる人々に島が誇る伝統文化や風習を広く伝える場となっています。