地熱と豊かな自然が織りなす絶景

和琴半島は、屈斜路湖の南側に突き出た美しい半島です。屈斜路湖は約3万年前の火山活動によって形成されたカルデラ湖で、その後も火山活動が続き、和琴半島の原型となるオヤコツ溶岩円頂丘が形成されました。長い年月を経て土砂が堆積し、現在の和琴半島が誕生しました。
アイヌ語で「オ(尻が)ヤ(陸地に)コッ(くっついている)」と呼ばれていたこの地は、大正10年に紀行作家・大町桂月によって「和琴」と名付けられました。

和琴半島の魅力の一つは、その豊かな自然です。
半島全体は原生的な森に覆われており、北海道らしい自然の美しさを感じさせます。半島を一周する和琴自然探勝路は約2.5kmの自然散策路で、コバルトブルーの湖を望み、珍しい高山植物やトドマツの純林、幹の周囲が15mにも及ぶカツラの巨木など、心浮き立つような景色を楽しみながら1時間程度で半島をぐるりと回ることができます。

和琴半島は地熱が高く、土壌も豊かなため、多くの花々が見られることでも知られています。春にはフクジュソウやミズバショウが咲き誇り、夏にはクルマユリやオオウバユリが見られます。秋には紅葉と共にエゾトリカブトが散策路を彩ります。特に5月中旬頃には、ヒトリシズカやフデリンドウ、エゾエンゴサク、ミヤマエンレイソウなど、色とりどりの花々が咲き乱れます。

半島の突端には、火山の名残である「オヤコツ地獄」があり、展望デッキからは噴気の上がる様子を間近に見下ろすことができます。正面には中島、その向こうに藻琴山がそびえ、雄大な屈斜路湖を満喫できる隠れた名所でもあります。

また、和琴半島はその地熱の高さから、日本で北限となるミンミンゼミの生息地としても知られています。ミンミンゼミは、かつて温暖期であったころの北海道では広く生息していましたが、寒冷化によって地熱の高い和琴半島だけに生き残った希少な種で、国の天然記念物に指定されています。

和琴半島の入り口には「和琴フィールドハウス」があり、周辺の自然や地形などについて分かりやすく展示しています。