「吟醸酒の父」が見守る安芸津の聖地

榊山八幡神社は、東広島市安芸津町に位置する歴史ある神社で、平安時代の1105年(長治2年)に現在の場所に移され、当初は亀山神社と呼ばれていましたが、天文年間(1532~1555年)に榊山神社と改名されました。

この神社は、広島杜氏の生みの親であり軟水醸造法を大成した三浦仙三郎翁の銅像が境内に立つことで知られています。三浦仙三郎は、広島の酒造りの基礎を築いた人物であり、軟水で酒を醸す技術を発明し「吟醸酒の父」として称えられています。

現在の本殿は1907年(明治40年)に再建されたもので、宮大工の上田治作・直次父子による作品です。この本殿は神社建築には珍しい濃密な彫刻が施されており、その美しさは訪れる人々を魅了します。また、境内には碧梧桐の句碑や安芸乃島関の碑もあり、歴史と文化が感じられる場所となっています。

榊山八幡神社の境内社には、学問の神である菅原道真公を祭る天満宮、戦没者581柱を祭る安芸津護国神社、そして酒造の守り神を祭る松尾神社があります。これらの社殿や神門、塀、幣殿、拝殿、松尾神社、随神門は国の登録有形文化財に指定されており、その歴史的価値が認められています。

さらに、境内には1716年(正徳6年)に廻船業者から寄進された手洗鉢や、1876年(文久元年)の三津村の商家の屋号が刻まれた25基の石灯籠、明治・大正期の酒造家の酒樽など、多くの石造物が奉納されています。これらの石造物は、安芸津の造酒屋や商家との深い関わりを物語っています。