四国霊場で唯一の一寺二霊場

神恵院観音寺は、四国八十八箇所霊場の第68番札所と第69番札所を兼ねる、非常に珍しい一寺二霊場です。神恵院は第68番札所、観音寺は第69番札所として知られています。この特異な配置は四国霊場巡りの中でも特に注目されるポイントです。

神恵院観音寺の歴史は、約1300年前に遡ります。法相宗の高僧・日証上人が、現在の琴弾八幡宮の神宮寺として宝光院(現在の観音寺)を創立したことから始まります。その後、大同2年(807年)に弘法大師が訪れ、八幡大菩薩の仰せを感得し、薬師如来、十二神将、聖観世音菩薩、四天王等の尊像を刻み、七堂伽藍を建立しました。これにより、山号を七宝山、寺号を観音寺と改め、八幡宮の別当寺として神恵院が設けられました。

もともとは琴弾八幡宮が68番札所、観音寺が69番札所でしたが、明治初年の神仏分離により、琴弾八幡宮にあった阿弥陀如来像が観音寺西金堂に移され、68番札所が神恵院となりました。このため、四国霊場で唯一、2つの札所が同じ境内に存在する一寺二霊場となったのです。

神恵院観音寺の見どころは、その歴史的背景と美しい建築物にあります。まず、神恵院の本堂は、コンクリートの外壁に囲まれたモダンな建物で、一見するとお寺とは思えない美術館のような雰囲気です。内部には白木の本堂があり、現代的な素材と温もりのある木の組み合わせが特徴的です。本尊は阿弥陀如来で、静寂な空気感が漂います。
一方、観音寺の本堂は、朱色と背景の山の緑のバランスが美しく、素朴ながらも威風堂々とした表情が特徴です。本尊は聖観世音菩薩で、弘法大師が刻んだとされる尊像が安置されています。