中世ヨーロッパの古城を思わせる威容と風格のダム

豊稔池堰堤は、昭和4年(1929年)に完成した日本最初期のマルチプルアーチダムであり、中世ヨーロッパの古城を思わせる独特な構造と風格が人気の観光スポットです。

ダムの堤長は145.5メートル、堤高は30.4メートルで、中央部には5つのアーチと6つの扶壁が配置されています。この構造は、農業土木技術史上非常に価値が高く、平成18年(2006年)には国の重要文化財に指定されました。ダムの両端部は重力式、中央部はマルチプルアーチ式という複合的な設計が特徴であり、これにより水圧を効率的に分散させることができます。

豊稔池堰堤は、阿讃山脈を分け入る柞田川(くにたがわ)の上流に位置し、その周囲には四季折々の美しい自然が広がっています。春には桜が咲き誇り、夏には緑豊かな景色が広がり、秋には紅葉が美しく色づきます。冬には雪景色が楽しめるため、一年を通じて訪れる価値があります。

特に夏に行われる「ゆる抜き」と呼ばれる放流は、豊稔池ダムの季節の風物詩として知られています。この放流はダムの貯水量が一定の水準に達した際に行われるもので、その豪快な水の流れは圧巻です。