国宝の磨崖仏

臼杵石仏は、平安時代後期から鎌倉時代にかけて彫刻されたとされる磨崖仏(まがいぶつ)です。凝灰岩の岩壁に刻まれたその数は、大小合わせて60体以上。その規模と彫刻の質の高さは、日本を代表する石仏群として広く知られています。平成7年には、磨崖仏としては全国初、彫刻としても九州初の国宝に指定されました。
石仏群は、古園、山王山、ホキ第一、ホキ第二の4群に分かれており、それぞれに個性豊かな仏像が並びます。中でも古園石仏群の大日如来像は、その優美な表情と均整の取れた姿で見る者を魅了し、臼杵石仏の象徴とも言える存在です。また、山王山石仏群には、童顔で愛らしい表情の如来像が並び、訪れる人々に安らぎを与えています。
臼杵石仏の歴史は謎に包まれており、いつ、誰が、何のために造営したのかを記す確かな資料は残っていません。地元に伝わる「真名野長者伝説(炭焼き小五郎伝説)」では、長者が亡くなった娘の供養のために彫らせたとされていますが、あくまでも伝説の域を出ません。しかし、仏像の様式などから平安時代後期から鎌倉時代の作と推定されています。
四季折々の自然に囲まれた石仏群は、春は桜、夏は蓮の花、秋は紅葉と、一年を通して美しい景観を楽しむことができます。静寂の中に佇む石仏と自然の織りなす風景は、訪れる人々の心を癒し、穏やかな時間を与えてくれます。